慢性鼻炎とは?

くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどの症状が、季節に関わりなく起こっている病気です。
朝は必ず鼻をかむ、夜になると鼻が詰り口呼吸になるなどの症状が起こりますが、いつものことなので病気として捉えられていない場合も多く、その結果、喉が乾く、喉が詰まる、咳が止まらないなどの鼻以外の症状で見つけられることがあります。
原因は、多くはアレルギーが関与しますが、中にはアレルギーの関与しない非アレルギー性の慢性鼻炎もあります。

見過ごされやすい鼻づまり(鼻閉)の危険性

花粉症を始めとする「季節性の鼻炎」が、鼻水、くしゃみ、鼻づまり(鼻閉)といった典型的な鼻炎症状をきたすのに対し、通年性のアレルギー性鼻炎は、鼻閉を主症状とすることが多く、くしゃみや鼻水を伴わないことが少なくありません。

鼻水やくしゃみは、薬剤治療に反応しやすく、また全身的な悪影響がほとんどありませんが、鼻閉はこれらとは対照的に、薬の効果が少ない、徐々に進行するため放置されやすい、そして慢性化すると全身的な悪影響をもたらすなど、他の症状とは異なる特徴を有しています。

鼻づまり(鼻閉の特徴)

  1. 1.保存的治療(薬・減感作治療)で効果が少ない
  2. 2.徐々に進行するため、放置されやすい
  3. 3.慢性化すると全身的な悪影響をもたらす

鼻閉は急に起こると、集中力や思考力を低下させ、睡眠を妨げるといった大きなストレスをもたらすことは、風邪や花粉症の際に実感された方が多くいらっしゃるでしょう。

これが長期間継続すると、日常生活の質(QOL)が低下するばかりでなく、とくに発育途上の小児では、脳や身体の発育に対する悪影響、風邪をひきやすい、虫歯になりやすい、歯並びが不整になる、あごの骨が変形するなど、さまざまな問題が指摘されています。

鼻閉に対するこれまでの手術治療
効果の限界と問題点

図:下鼻甲介鼻閉に対するもっとも一般的な治療法は、下鼻甲介の粘膜を熱で凝固させる方法で通常「レーザー手術」と呼ばれています。

最近ではレーザーの代わりに、アルゴンプラズマや高周波凝固装置も用いられていますがどれも効果は同様です。

外来で簡便に行える手術ですが、アレルギー性鼻炎に対する効果は限定的で、多くが数ヶ月程度で再発してきます。

花粉症の手術治療
下鼻甲介の粘膜や骨を切り落とす手術も古くから行われている方法ですが、鼻の機能―加湿、加温、除埃―の維持には、鼻を通過する空気を層状の気流に分ける突起状の構造物(鼻甲介)と、その周囲に"適度な隙間"が形成されていることが大切です。

隙間の過剰な拡大は乱気流主体の気流を形成し、かえって鼻閉が悪化する危険性がありますので、下鼻甲介を切り落とす手術は行うべきでないという認識が次第に広がりつつあります。

新しい手術治療 - 後鼻神経切断術

図:後鼻神経鼻閉に対する理想的な手術は、鼻の正常な構造を破壊せず、その機能を保ったまま、腫脹した粘膜を改善させる方法です。

そのひとつとして、腫脹した粘膜に分布している副交感神経を切断する手術があります。50年ほど前に確立した方法で、治療効果が高いことから一時は世界中で行われました。

しかし当時の手術は、鼻の外から神経にアプローチする大掛かりな手術であった上に、涙の分泌障害をきたすという副作用があり、次第に衰退していきました。

この手術を、治療効果を維持したまま、涙の分泌障害を引き起こすこともなく、鼻内から行える手術として現代によみがえらせたものが、1997年に黄川田が開発・報告した「内視鏡下後鼻神経切断術」です。これは、内視鏡を用いて鼻腔から0.5mmほどの太さの副交感神経を露出させ、明視下に切断するという世界で始めて報告された画期的な方法です。

写真:本手術がサージセンターのオリジナル手術法として、米国の医学雑誌に掲載されています。(Operative Techniques in Otolaryngology, 2007)

この報告後、本邦においてアレルギー性鼻炎に対する新しい手術治療として次第に定着しつつありますが、副交感神経のみを切断するというオリジナルな術式には高度な手技が要求されるため、一般には神経に伴走する太い動脈(蝶口蓋動脈)と一緒に切断する方法が普及しているようです。

しかしながら私たちは、蝶口蓋動脈は、鼻の加温機能において主要な役割を果たしていることから、切断すべきでないと考えています。サージセンターでは、アレルギー性鼻炎の治療に必要な神経のみをターゲットとした安全で身体への負担の少ない手術を、日帰りで実施しています。

慢性鼻炎に対する手術の役割

慢性鼻炎は本来1回の手術では完治できない難治性の疾患です。手術の効果は、手術法によっても、また患者様によっても異なります。後鼻神経切断術は、優れた効果を長期間得ることができる治療法ではありますが、次第に症状が再発することも、また特にアレルギーがある場合には、その原因物質となる抗原(花粉、ダニなど)が鼻に侵入する度に症状を反復することもあります。

では、なぜ完治できない疾患に対して手術を用いるのでしょうか?

その理由は以下のような症状がコントロールしやすい状況を創り出せることです。

  1. 1.鼻閉は保存的治療では改善困難であり、手術が最も有効であること
  2. 2.後鼻神経切断術を軸とした手術治療が、他の手術よりも安全で優れた効果を期待できること
  3. 3.症状が再発した場合でも、短期間点鼻薬あるいは内服薬を使用するだけで症状が消失すること

アレルギー性鼻炎の手術意義は、まず“正常な鼻からの呼吸を取り戻すこと”、そして再発した場合でも、保存的な治療を組み合わせることで"正常に近い状態を維持すること"にあるのです。